小説家養成ゼミであらすじ発表会、1位のプレゼントとアドバイスをいただいたレポート

2020/04/14

小説執筆アドバイス 百年戦争と15世紀フランス

t f B! P L


2019年春、天狼院書店様主催「小説家養成ゼミ1DAY講座」を受講しました。
きっかけは、SNSをスクロールしているときに、ある宣伝が目にとまったから。

「超」入門小説1DAY講座~視点論・プロット・構成・キャラクターなど小説を書く上での基本を学ぶ!この新年度から執筆を始めたい&プロのアドバイスが欲しい方へ!《講師:関根亨先生(歴26年・文芸編集者)/作品フィードバック優秀作品にプレゼント有り!》

筆者は、半年前(※ゼミ受講時点)にWeb小説投稿サイトで執筆を始めた新参者です。

おかげさまで、ブックマークと評価が少しずつ積み上がっていき、ほんの数日前には某社様からSNSを通じてある打診をいただきました。
作家のアコガレ「書籍化の打診」ではありませんでしたが、光栄なお誘いでした。

そんなこともあって、自作をブラッシュアップしたいと考えていた所でしたから、ちょうどいい機会だと考えました。



プロフェッショナル編集者のレクチャー

ライター系のワークショップは初体験です。
講義内容まではシェアできませんが、差し障りない程度にかいつまんでご紹介します。

今回の講師は、文芸編集者歴26年、実業之日本社で文芸編集長を務め、評論も手がける関根亨先生です。

直接受講のほか、動画配信による通信受講も選べます。
私は直接受講を選びました。

入り口でワンドリンクをオーダーしたら、先着順で好きな席に座ります。


IMG_2328.jpg
プラカップのブランドロゴがかわいい。中身はアイスコーヒー。

はじめに10ページほどの資料が配られ、講義の合間には、関根先生が関わった校正付き生原稿(赤ペンで校正・校閲が入っているアレです)などを拝見しました。

講座は休憩を挟んで約3時間みっちりと詰まっています。
通信受講の方を含め、質疑応答も可です。

以下、http://tenro-in.com/event/81257で公開している部分から引用します。

I.小説を書く上での基本をプロの編集者から学ぼう!

書式や基礎的な表現法など小説を書く上での基本を学んで頂きます。
視点論、ストーリー構成、キャラクターなど、小説を書く上での基本中の基本を教わります。プロの編集者は、作品を読む上でどんなところに注目するのか? という点まで掘り下げて考えていきます。
ことに初心者の方が必ずと言っていいほど”陥りがちな作品上のミス”を克服する方法をお伝えします。
これから書いてみようかなという方はもちろん、すでに執筆をなさっている方も復習として学んで頂けます。

II.小説を書くには欠かせない!プロット(あらすじ)の書き方

新人賞に応募する場合にも、プロット(あらすじ)を提出し、選考過程でもまずはそれを読まれることになるので本編と同じくらい大切です!
でも、あらすじと言っても何をどこまで書いていいのかわからない……。
そもそも”面白いストーリー”ってどういうものなの?
と小説家養成ゼミの受講生からもお悩みの声がよく聞こえてくるのもプロットなんです。
その書き方のポイントについて学んで頂きます。

Ⅲ.小説家になったらどうやって本を売っていくの?

あのベストセラー小説はどうやって生まれたのでしょう。何かマーケティング的仕掛けがあったのでしょうか、それとも……?
ベストセラー仕掛けの具体例をお話しするとともに、皆さんが小説家デビューした際に、どんな販促展開を行うのか、映像化はどうやって決まるのか。
業界内部でした知りえない情報が入手できます。

Ⅳ.文芸編集者による作品フィードバック

講師・関根亨先生が、みなさまの作品アイデアにフィードバックを致します。
書かれている作品の概要をその場でお話しいただき、それをどうすれば面白くなるのか、フィードバックしてくださいます。さらに作品が優秀と講師が判断した方には、プレゼントもあります。

Ⅴ.小説家になるための読書術

よい作品を書くためには良質なインプットが重要。
いろんな作品を読んだ方がいいんだろうなとは思いつつも、自分の好きなジャンルに偏ってしまいがち。
ではどのように読む本を選んだらいいの?という疑問に、現在の文芸界のトレンドも交えながらお答えしていきます。

(※引用ここまで。原文ママ)

小説を書くためのノウハウ以外にも、マーケティングや収益、作家の生計の立て方まで、貴重なお話をたっぷりお聞きしました。

部数の採算分岐点、原稿料の相場、公募選考の仕組み、出版不況のあおりで国内の発行部数は減っていることと近年の新たな展開や二次利用について、近い将来、流行りそうなジャンル予測なども。

具体的な情報を知りたい方は、定期的に開催しているゼミを受講してくださいね。


あらすじ発表会とフィードバック

小説家養成ゼミの冒頭、講師の関根先生がサプライズを予告しました。

「講義のさいごに、受講者のみなさんが書いている作品のあらすじを聞かせてください」

この場で小説のあらすじやアイデアについて発表して、関根先生が編集者視点からアドバイスをフィードバックしてくれるそうです。

「一番おもしろかった受講者にはプレゼントがあります。まだ書いていない方は構想段階のアイデアでいいですよ。休憩時間に考えてみてね」

先に結論を申し上げると、わたくしが一番になりました!!
本ページのタイトル「1位のプレゼントとアドバイスをいただいた」は、文章そのまんまの意味です。


発表に備えてあらすじを考える

小説家養成ゼミに限らず、ライター系ワークショップで指導する講師といえば、現在活躍中の商業作家か、あるいは編集関連の仕事をしている方です。

私がお世話になった関根先生は後者になります。

顧問講師には文芸編集者歴26年、実業之日本社で文芸編集長まで務め、現在では、どんでん返しをテーマにしたアンソロジー編集や評論も手がける関根亨氏を迎え、完全なるプロの視点での講義や作品の講評を実施。
(http://tenro-in.com/event/81257の紹介文より引用)

小説について学ぶためにゼミに参加しましたが、あらすじ発表会はまったくの予想外でした。

Web小説投稿サイトで書き始めて約半年(※ゼミ受講時点)。
幸いにもいくつか感想やレビューをいただき、SNSで自作の小説について話す日もあります。

拙作のタイトルは、「7番目のシャルル 〜狂った王国にうまれて〜」

ジャンルとしては歴史小説ですが、マイナーな時代(15世紀フランス)とキャラクター(シャルル七世)を取り扱っているため、あらすじを発表する前に時代背景について説明した方がいいと考え、休憩時間にあらすじをまとめました。

スマホでWeb小説サイトにアクセスして公開済みのあらすじを確認しましたが、即却下しました。

「あらすじを口に出すのが恥ずかしい!」

なにせ、リアルな人々の前で、しかもプロの編集者に対して自作を発表するのは初めての経験ですから。緊張しないわけがない。

突貫工事のごとく、発表会用の説明文を作りました。


あらすじ発表会

ついに、あらすじ発表会の時間がやってきました。
ただでさえドキドキするのに、人前でけなされたら凹みそう……

でもすぐに、「今日はシャルルをブラッシュアップするために来たのだから、どんな評価も真摯に受け止めよう!」と思い直しました。

発表の順番が回ってきて、少し早口になりながらも自作のあらすじとコンセプトについて話しました。

「小説投稿サイトで、マイナーな時代の歴史小説を書いています」
手前味噌ですが、ざっくり紹介します。


小説の舞台は15世紀フランス、英仏・百年戦争です。

一般的にはジャンヌ・ダルクが有名ですが、ジャンヌのおかげで王になったのに恩人を見捨てたと言われている勝利王シャルル七世が主人公です。

百年戦争は、フランス王位をめぐる英仏間の戦争で、その名の通り、とても長い戦争です。

シャルル七世は戦いが始まってから五代目の王になります。父親は狂人王と呼ばれるほど精神を病んでいて、母親はフランス王国史上最悪の悪女で淫乱王妃とも呼ばれています。

主人公は、そんな国王夫妻の間に生まれた10番目の子で五男ですが、兄たちが他界したために14歳で王太子になります。実質、国王代理です。

しかも、実母とその愛人に命を狙われて王都パリから逃亡。
百年戦争中、もっとも劣勢な状況下で王位を継承しますが、戴冠式を行うこともできません。

そこへ、かのジャンヌ・ダルクが登場して窮地を救われます。
ですが、シャルルが王位に就いたのもつかの間、ジャンヌは敵に囚われて火刑に処されます。

ジャンヌ・ダルクの物語はここで終わりますが、実は、戦争はまだ続いています。

火刑から終戦まで25年もかかっているのに、ジャンヌ後のエピソードに触れた物語は、私の知る限りではどこにもありません。
あるなら教えて欲しいくらいです。

誰も書かないなら、いっそ私が書こうと思いました。


以上、ゼミのあらすじ発表会では、そんな風に紹介しました。


編集者視点からの質問とアドバイス

あらすじを一通り発表すると、関根先生が編集者視点からの質問とアドバイスをフィードバックします。

はじめに「自分はあまり西洋史関係は詳しくないけれど、おもしろいコンセプトだと思う」という評価をいただき、「原稿用紙で何枚くらい書きましたか」と質問されました。

原稿用紙で何枚かけるか?


Web小説界隈だと、小説の文量=字数換算が主流ですが、一般文芸の世界では四百詰め原稿用紙の枚数で計算します。

作家の収入は、印税と原稿料です。
つまり、原稿用紙の枚数は収入に直結する超!重要項目と言えます。

私はとっさに答えられませんでした。
知らなくても叱られたりしませんが、知っていた方が編集サイドとスムーズに意思疎通できます。

それからもうひとつの質問。

執筆の参考にした小説はあるか?


いわゆるパクリという意味ではなく、小説に限らず映画やマンガなども含めて影響を受けた媒体はあるか?と。

自覚的でも無意識でもいろいろな影響を受けていると思います。
ですが、「ジャンヌ・ダルク火刑後」と「シャルル七世がメイン」の物語は、私の知る限りではどこにもありません。

「あるなら教えて欲しいです」

文芸誌の編集長まで務めた先生に対して生意気な発言だったなと、後で反省しました。
でも、本音です。私が読みたいので!


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質問の後、アドバイスをいただきました。
個人的にとても参考になったのが一人称で歴史を書くコツ

なお、ゼミ受講時、拙作は原稿用紙500枚くらい執筆していました。
まだ主人公は14歳で、ジャンヌすら出てきません。このペースで百年戦争終結まで何年かかるやら。


1位のプレゼントは綾辻先生の美麗なご本

な、なんと! あらすじ発表会で1位に選ばれ、プレゼントをいただきました。

(確か)関根先生が関わった書籍がずらっと並んでいて、「お好きな本を差し上げます」と勧められ、私は綾辻行人先生の「深泥丘奇談・続々」を選びました。

装丁がめちゃくちゃ美しかったのです!

綾辻先生といえば館シリーズですが、個人的な思い出としては、私がまだ可愛げのあるJKだったときに「殺人鬼」を読んで吐いた記憶が……
今にして思えば、ティーンの女の子が読む本じゃなかったなー(褒めてます)
何もかもが懐かしい。




いただいたご本。
表紙をひらいた見返し部分までカラーの挿絵が載っています。

私は小説界隈では少数派の電子書籍肯定派です。
本のカタチにこだわりがない「読めれば何でもいい」タイプですが、実物ならではの凝った装丁には憧れます。





編集者が新人発掘で重視する、小説のお作法より大事なこと

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

本作は小説家になろう向けレポートとして書きました。
いま、ご覧になっているページは、画像を追加+大幅に改稿したものです。

こんな末尾まで読んでくださったお礼を兼ねて、役に立ちそうな情報をひとつ。

ネット小説界隈でよく聞かれる常識、たとえば「三点リーダーは2個」「感嘆符の後は1字空き」などの作法は、編集者が新人作家を発掘するときに重視しません。

その代わり、小学校で学習する作文ルール、たとえば「段落はじめの1字空き」などができていないと大分よろしくない。

業界の専門知識は、後からいくらでも知る機会がある。校正で直すこともできる。
それよりも、一般常識や教養が身についていない方が厳しい。

だからと言って公募作を読まずに落とすことはしませんが、編集者視点からの第一印象は良くないそうです。
公募にチャレンジする方はご注意ください。基本がだいじ。







関連Web小説(外部サイト)『7番目のシャルル ~狂った王国にうまれて~』掲載先リンク集
[あらすじ]
15世紀フランス、英仏・百年戦争。火刑の乙女は聖人となり、目立たない王は歴史の闇に葬られた。
一般的には「恩人を見捨てた非情な王」と嫌われ、歴史家は「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と秩序をもたらした名君」と評価しているが、500年後にめざめた王は数奇な人生について語り始めた。
「あの子は聖女ではないよ。私はジャンヌを聖女とは認めない。絶対に」
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。

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