【サンプルページ】短編小説「7番目のシャルル -étude-」

2020/04/04

小説「7番目のシャルル」

t f B! P L



(※)このページは、ブログのデザインを確認するために作ったサンプルページです。

無意味な文章を垂れ流すだけではつまらないので、Web小説「7番目のシャルル 〜狂った王国にうまれて〜」を執筆する前に書いた短編小説(改稿前)を掲載します。
ブログの仕様を確認する目的で、脈絡なく「見出し」や「区切り」を入れています。

小説本編はTwitterのURLをご利用ください。



ページの最後に、Web小説サイトでは未掲載の「こぼれ話」を追加しています。



7番目のシャルル -étude-(大見出しサンプル)


タイトルのétude(エチュード)とは、
「練習曲、試作」という意味のフランス語です。

小説投稿サイトで公開している「悩める王太子のディマンダー」を改稿、最後に「こぼれ話」を追加しています。


あらすじロングバージョン(小見出しサンプル)

舞台は15世紀フランス、百年戦争末期。
救国の英雄ジャンヌ・ダルクがあらわれる数年前の物語。

英仏・百年戦争は休戦していたが、フランス王の発狂で王国は内乱状態となり、イングランド王ヘンリーは再び野心を抱く。

兄たちの相次ぐ死で、第五王子シャルルは王位継承権第一位の王太子となり、王都パリへ連れ戻された。

父王に統治能力がないため、王太子の身分は国王代理も同然。
何も教育を受けていないのに重責を背負わされ、14歳の王太子は悩みながらも宮廷で奮闘していた。

1年後、母妃と愛人のクーデターで王太子は命を狙われ、からくも王都から脱出した。
悩める王太子は、逃亡先のシノン城で自問自答をくり返し、星空に問いかける。




あらすじショートバージョン(準見出しサンプル)

舞台は15世紀フランス、百年戦争末期。
救国の英雄ジャンヌ・ダルクがあらわれる数年前の物語。

歴史と運命に翻弄されていく(もしかしたらジャンヌ以上に…)、孤独な王太子のひとりごと。


悩める王太子のディマンダー


フランス王国を流れる四大河川のひとつ、ロワール川のほとりにて。
今日もまた、私はシノンの城塞から沈む夕陽を眺めている。

敬愛する父上。
あなたの背には赤黒い闇が広がり、死の匂いが漂う。
現実から目をそらしたまま、あなたは何を見ているのか。

親愛なる母上。
あなたの唇から青白い毒が吐かれ、狂った情夫たちが殺戮を繰り広げる。
相手が誰かも分からないまま、何ゆえに私を産み落としたのか。

夕陽に潜む闇が、今日も私の胸をえぐる。
茜色の空よ、私は何に従うべきで、何を探すべきなのだろうか。





戦火が再び王国を駆け巡る。
時代に翻弄される者たちは、それぞれの場所で、それぞれの想いを巡らせていた。

フランス王国・王都パリの宮殿。イングランド王ヘンリー五世を出迎えたのは、花嫁カトリーヌ王女と義母となるフランス王妃イザボーだった。

「なんと美しい姫君だ!」

ヘンリーは居並ぶ家臣たちを押しのけると、ろくに挨拶も交わさないまま、カトリーヌ王女を抱きしめ、おもむろにキスした。

「私は姫を熱烈に愛している。姫の祖国フランスをも愛している!」

ヘンリーは熱っぽく情感を込めて求愛し、人目も憚らず求婚した。

「カトリーヌ王女の美しさはフランス王国そのものだ。私は姫のすべてが欲しい。私はカトリーヌ王女を愛するがゆえに、小さな村一つさえも見逃しはしない。すべてを我がものとしなければ気が済まない!」

ヘンリーの熱意に圧倒されたのか、カトリーヌは頬を染めてうつむき、イザボーが二人の婚姻成立を祝福した。





現フランス国王シャルル六世は、「狂人王ル・フー」と呼ばれている。
ずいぶん前から精神を病み、統治能力を失っていた。

国王代理を務める王太子ドーファンシャルルは、王妃イザボーと愛人の謀略によって命を狙われ、二年前に王都を追われていた。
王妃は権力を掌握するため、王太子を愛人の子……つまり王の子ではなく私生児として王家から排除し、王女と王冠をイングランド王に差し出した。

宮殿で厳粛な婚姻の儀が執り行われ、城下で豪華な結婚パレードが繰り広げられたが、民衆の反応は冷ややかだった。
人々は、正統な王位継承者を廃し、独断で王冠をイングランドに売ったイザボーのことを売国奴または淫乱王妃と呼んで憚らなかった。

ヘンリーもまた、娘を差し出してすり寄ってくる義母を見下していた。

(……売女め)

だが、イングランド王家にとってフランス王位の継承は百年来の宿願。
この際、王位の正統性はどうでも良かった。

(くだらぬ。初代クローヴィス王に連なる男系血統がそれほど大事か)

民衆の冷たい視線は、馬上のヘンリーにも注がれていた。
フランス王国の前身、フランク王国の初代国王クローヴィス。
フランス王位はクローヴィスの男系血統の男子のみが受け継ぐと古来より定められている。
イングランド王ヘンリーは女系血統の末裔だった。

(忌々しいシャルルめ、貴様さえ生まれてこなければ!)

王の息子たちは、末弟シャルルをのぞいてみな不審死を遂げた。
現・王太子シャルルは、最後の直系男子であり、唯一生き残っている王位継承者だった。まだ17歳で妻子はいない。
シャルル本人に野心がなくとも始末しなければならない。

(できるだけ早いうちに、確実に。だが今は……)

この茶番じみた結婚パレードをさっさと済ませて、シャルルの廃嫡を記したトロワ条約に調印する。これでフランスは晴れてイングランドのものになる。

(シャルルが生きていても死んでいても、これでフランス王位は私のものとなる。くっくっく、女系血統と蔑むなら蔑むがいい。フランス王になるのはこの私だ!)

たとえ国王の精神が狂っていても、条約は国同士の取り決めである。
覆すことは容易ではない。

茶番は終わらない。
王国は間もなく焦土と化すだろう。
人々はさまざまな憶測を思い巡らせ、まだ見ぬ物語はいくつもの地平線を駆け巡る。

イングランド王ヘンリーが剣を取るならば、フランス王太子シャルルは盾を取るのだろうか。それとも……。





フランス最大の大河・ロワール川は北仏と南仏を隔てる要衝で、川のほとりには無数の城塞がひしめく。

フランス最大の大河・ロワール川は北仏と南仏を隔てる要衝で、川のほとりには無数の城塞がひしめく。
そのうちのひとつ、シノンの城塞に王太子は居を定めた。

時は流れ、今日もまた赤い夕陽が落ち、漆黒の夜空が降ってくる。
どこにいても、どんな時も、この空だけは変わらない。

修道院に幽閉されていた幼いころ、のどから手が出るほど家族に焦がれていた。
初めて両親に会ったのは、皮肉にも兄たちの死で王都に連れ戻されたがため——

「ああ、父上、母上……」

何度も夢に見てやっと手に入れたはずの宝物は、ガラス細工のように脆く、掌から零れ落ちていくばかり。
居場所も肉親も、かけがえない友も、何もかも。

「私たちはいつまで奪い合い、憎み合い、血を流し続けるのだろうか」

どれほど祈り、どれほど叫ぼうとも声が返ってくることはない。

「私は今、何と戦うべきで、何を守るべきなのか。私たちは何を畏れるべきで、何を愛すべきなのだろうか」

祈りが途切れ、ふと夜空を仰ぎ見た。
天上には数え切れない星屑が散っていて、地上へ降ってくるような錯覚を覚える。
偉大な天上の神は、愚かな地上のヒトを試すかのように絶えず困難を降らせる。
その神意は計り知れず、私はただ運命を受け入れることしかできない。

ならば、暗闇に光を灯す星空に問いかけよう。
愛する同胞よ、滅びへ向かう王国よ、過去と未来をつなぐすべての人々に問う。

「ヒトは何を育むべきで、何を遺すべきなのか」

私にはいまだに何も分からない。
だが、遠い未来で歴史は語るのだろう。死んだ私たちの物語を。


あとがき


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(引用サンプル)
本作は、連載小説「7番目のシャルル ~狂った王国にうまれて~」をスタートする数ヶ月前に書いた習作、いわゆるプロトタイプです。

なお、本作は、Sound Horizon『Moira』から多大なインスピレーションを受けていることを記しておきます。

この短編小説を書いたときは内輪受けパロディのつもりでした。
長編小説を始めたのは、私自身も予想外。


こぼれ話「シェークスピアの戯曲・ヘンリー五世」

ヘンリー五世がカトリーヌ王女に求愛するエピソードは、ウィリアム・シェークスピアの戯曲『ヘンリー五世』を参考にしています。
ロマンチックに聞こえますが、王太子シャルルからすれば迷惑極まりない話です。

なお、イングランド視点の歴史では、百年戦争はここで終わったことになっているとか。
まだだ、まだ終わらんよ!





こぼれ話「ロワール渓谷の城」

王太子とジャンヌ・ダルクが対面したシノン城はすでになく、跡地のみ。
代わりに、同じロワール川を見下ろす高台に建てられたアンボワーズ城からの眺望です。

15世紀末に改装しているお城なので、飽くまでもイメージということで。
こんな感じの場所で、王太子は祈ったり悩んだりしていると。

アンボワーズ城・塔から正面の眺望(C)kokorowa shinjin

シャルル七世にゆかりのある城のひとつです。
参考までにWikipediaのリンクを貼りますが、内容が少々誤っているようです。ご注意ください。
1431年、当時の城主ルイ・ダンボワーズが王太子ルイ(後のルイ11世)に対する陰謀の容疑で有罪判決を受けて処刑されると、1434年9月4日シャルル7世が城を差し押さえた。
※引用先:アンボワーズ城 - Wikipediaより。

実際の話は、シャルル七世は八歳の息子ルイを謀略のだしに使われたと知り激怒。
一度は、首謀者を処刑しようとしますが、のちに考え直し、アンボワーズ城没収と引き換えに赦免しています。以来、王家所有の城になりました。

Château d'Amboise — Wikipédia(アンボワーズ城 - フランス版Wiki)
Louis d'Amboise — Wikipédia(ルイ・ダンボワーズ - フランス版Wiki)

ルイ・ダンボワーズは、日本語版Wikiだと「有罪判決を受けて処刑」と書いてありますが、実際はシャルル七世(1461年没)より長生きしています。1469年没。







関連Web小説(外部サイト)『7番目のシャルル ~狂った王国にうまれて~』掲載先リンク集
[あらすじ]
15世紀フランス、英仏・百年戦争。火刑の乙女は聖人となり、目立たない王は歴史の闇に葬られた。
一般的には「恩人を見捨てた非情な王」と嫌われ、歴史家は「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と秩序をもたらした名君」と評価しているが、500年後にめざめた王は数奇な人生について語り始めた。
「あの子は聖女ではないよ。私はジャンヌを聖女とは認めない。絶対に」
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。

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